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目をさまします。 灰になっていたはずの僕は、何故だかしっかりと自分の体を感じることができました。 でもそれは五体満足、というよりは、無数に手足があるような気がして、ぎょっとして自分の方を見てみようとしましたが、何故だか見ようとすると体がクルンと丸まって、よく見えないのです。 仕方がないのでそこらへんを適当に歩いていますと、やはり不思議な感覚です。 あたりを見回しますと、先ほどの荒野ほどではないけれど真っ暗で、不安になりながらカサコソとそこらへんを散策するのですが、やはり一向に自分がどこにいるのか分からず、ついぞ先ほどのように丸くなるのでした。 寂しい、悲しい、不安だ、助けて。 いくら頭で考えても、言葉は口をついて出ることはなく、黒いモヤのようなものが、僕の体を支配するようでした。 でもしばらく、それは1日だったのか一年だったのかは良くわかりませんが、丸まったり歩いたりゴロゴロしていますと、自分がダンゴムシになったことに気づいて、それがまた案外悪くない生活のように思われてくるのです。 食べ物だって、初めは探すのに苦労しましたが、そこら中に転がっている枯葉を毎日ムシャムシャ食べていますと、なんだかだんだん満たされてきて、人間の時は、毎日同じものを食べることをあんなに躊躇していたくせに、いざダンゴムシになってみると、餌を探すほうが苦痛に思われて、それからというもの、そこらへんに落ちている枯葉だけで生活するようになりました。 他に仲間も見かけませんでしたが、食って寝てフンをして、あとは適当に運動をしていれば(丸まったり歩いたりだけですが)、案外時間というものは早く経過して、人間の時には許されていなかったであろうこの怠惰な生活が、ひどく正義のように思われるのでした。
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