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閉鎖された世界で、常に人から与えられてきた私は、「自分で決めない」幸福を覚えました。
それはひどく不自由で、たまに理不尽に感じられるのですが、今になって思えば、それは「自分で決める」ことの苦しみを知らなかったからだと思われます。
食を与えられ、居場所を与えられ、役割を与えられ、僕は全てを受け入れて、自らの責務を全うしました。
ああ素晴らしき世界、ああ素晴らしき世界。
あたりを見渡せば一面の鉄格子。
体にくっついたピアノ線のような意図が、天井にいくつも続いていました。
傀儡。
「自由」をうたい、「解放」を求め、それでも今の生活に安らぎを感じ、特に何も考えていない空っぽの頭は、お外へ続くドアに手をかけたとき、ひどく嬉しく思いました。
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