小さな幸せ

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“今日は特別な日だ”  朝起きてベランダに通じる窓にかかったカーテンを開けて外を見た時、私は一番にそう思った。  別に今日何か特別な予定があるわけでもないし友人や自分の誕生日でもない。  梅雨のせいで最近毎日雨が降っていた中で今日は綺麗な青空だ、ってただそれだけのことだ。でも私はなぜか今日が特別な日になる気がしてならなかった。 「今日は何をしようかな」  自分に問うようにそう呟く。今日は久しぶりに大学の授業もアルバイトもないのだから友人を誘って遊びにでも行こうかとも考えたが、なぜか今日は一人で過ごしたいと思ったのでその考えはすぐに消えた。こんな気分になったのも先ほど思った「特別な日」というのが関係しているのかもしれない。 「そうだ、久しぶりの晴れだしお洗濯でもしよ」  最近はずっと雨続きで洗濯物を外で干すことができず、室内干しかコインランドリーへ持って行って乾かしていたためこの貴重な日の光を逃すまいとまずは洗濯をすることに決めた。  洗濯したいものを集めて洗濯機にぽんぽんと放り込みスイッチを入れ、洗濯機の前にしゃがみ込みぐわんぐわんと洗濯物を抱えて回る水をぼーっと眺めているときゅうと自分のお腹が鳴る音がする。昨日は確か疲労からかアルバイトから帰って来た後はお風呂に入ってそのまま夕飯を食べずに布団にもぐって寝てしまったんだっけ…と考えながらキッチンへ向かい目の前の編み籠の中に入っている八枚切りの食パンの袋に手を伸ばす。  袋の中から一枚取り出してトースターに乗っけてスイッチを入れ、パンはトースターに任せて私は水を入れたやかんをコンロに乗せて火にかける。  待ってる間にお皿やパンに塗るものを準備して、ついでに棚の奥からティーバッグの入った箱を取り出す。普段は大学やアルバイトで忙しくてこんなにゆっくりと朝食が食べられないために紅茶など入れようと思わないが今日はいいだろう。私紅茶好きだし。  そうしてトーストとお湯が出来るのを待っているとトースターから電子音が聞こえてくる。お湯もいい感じのようなのでパンを取り出す前にカップにティーバッグとお湯をいれてスタンバイしておき、それが終わってからトーストを取り出してお皿にのせる。先にトーストを取り出すとなんだか冷めてしまいそうだなと思ったのだ。  出来たものを既に色々と準備しておいたテーブルに運び席につく。
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