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「そうなんだ。厳しい世界なんだね、高校野球って…」
唯斗は、悔しさと情けなさが再び込み上げてきた。唯斗の表情が暗くなる
「でもね、そんなときこそ笑わないといけないと思うよ」
唯斗は、響子の方を向いた
「くよくよしてても仕方ないし、嫌なことも笑って吹き飛ばしちゃえばいいと思うんだ」
響子は、唯斗の表情を見て落ち込んでいることを察したのか励まそうとしていた
「あ、偉そうなこと言ってごめんね」
響子は、苦笑いしながらそう言った。すると、唯斗の心の中で重りになっていたものが一気に外れた気がした
(宮崎も悔しいけど次のチャンスに向けて努力してるんだ。俺もくよくよしてる場合じゃないよな)
唯斗の表情は、笑顔に変わった
「ありがとう宮崎。俺も次のチャンスをモノにできるように頑張るよ」
唯斗がそう言うと響子は唯斗の表情を見てニコニコと笑いはじめた
「あ、宮崎のフルート聴かせてよ!」
「うん、いいよ。でも下手だから笑わないでね」
響子はフルートを取り出して楽譜を広げた
響子が演奏を始めると、澄んだメロディーが公園中を包み込むように響いていた。唯斗は、響子の演奏を驚きと賞賛の眼差しでいつまでも聴いていた
ー おわりー
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