10話 一瞬の夏、一生の記憶

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ガラガラ! 部室のドアが開くと高木さんが入ってきた 「おお、片桐。慎之介の雨用のミット取りに来たんだろ?早く行ってやれ、雨降って来たぞ」 窓の外を見るとポツポツと雨粒がガラスを叩いており、選手とマネージャーがボールなどが雨に濡れないよう運んでいた 「は、はい。すみません」 高木さんが唯斗を見ると、ケースに入った注射器を持っていた 「あー。お前見ちまったか」 高木さんにそう言われると、唯斗はドキッとして表情が変わる 「大丈夫だ。もちろん怪しい薬とかじゃねえよ」 唯斗は、安心して肩の力が抜けた 「笠原さんな、大病を患ってたんだよ」 また唯斗の表情が変わり、目が見開く 「え!?た、大病?笠原さん大丈夫なんですか?」 「今は大丈夫だ。産まれたときは、3歳迎えられないって言われてたって言ってた。野球なんか不可能」 唯斗は、笠原さんの頼まれ事を忘れ聞き入っていた 「でも、あいつは病気に勝つことができた。そして、野球もさせて貰えて春の甲子園も行けた。どうだ?かっこいいだろ笠原さん」 「は、はい!凄いです!だから、チームメイト思いの方なんですね!」 「ま、そういうことだ」 タッタッタッタ! 足音と共に友隆が入ってきた 「片桐君!笠原さんがミットまだかって怒ってるよ!」 唯斗はハッとして高木さんに頭を下げミットを持ってグラウンドに戻った。その後、笠原さんに怒鳴られたのは言うまでもない
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