1章

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「若宮さん、急な発注にだけど対応できますか?」 「いえ、大丈夫です、おまかせください」 納期の詳細を詰めていき、訪問先の会社を後にした。頭の中で納期までの段取りを考える。納期が短い、これは急ぎ発注をかけなければ間に合わない。でも、お客様の信頼を勝ち取るためにやらなければと強く思った。 「ふんばりどころよ、がんばらなくっちゃね!」 季節は春。 まだまだ寒いが、日差しが柔らかで心地よい。やわらかな風に揺れて桜のつぼみが咲いている。 4月になれば、きれいな桜並木へと街並みは変化するだろう。 私、若宮ひな《わかみやひな》が勤務している会社は小さな文具商社。 文具商社だから全国に支店があるが、各支店の中には20人ほどしかいない。 その中で、私は希望していた営業職についた。 理由は営業マンとして定年退職するまで、営業一筋で頑張った父の背中をみて私もこうなりたいと思ったからだ。 私は配属は地元福岡。地元を希望していたので、内定を勝ち取ったときは嬉しかった。 博多駅のオフィス界隈に我が社がある。個室もない風通しのいいオフィス。支店長の好みで、緑がたくさんあるおしゃれなオフィスになっている。 創業して歴史も浅い会社とあって、社風も柔軟性にとんでいる。若手が重責を担うという意識が根付いているのも特徴だ。大好きな事務用品をお客様に届ける、その仕事に私はやりがいを感じていた。
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