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少女
いつまでも、少女のままでいたかった。
酸化する肉体の老化が緩やかになるように。
時が私を見つけださないように。
薄汚れた部屋の片隅で
じっと息を殺すのだ。
少女であり続ければ
今、手のひらの中にある未来の可能性すべてが私のものになる気がした。
そんな私に
(ホルマリンをどうぞ)
そう言って彼は透き通る試験管を差し出した。
嗚呼。これで。
努力もしない才能もない
水蒸気のように
あっという間に消えていく私の可能性を閉じ込めることができる。
掌に残っているすべて。
全ての可能性をそっくり漬けてしまおう。
星砂のようないくつもの可能性は
試験管の中でゆるりと浮遊して
きっと甘く輝くのだろう。
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