無題

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無題

1日目 引き出しの下からノートと鉛筆を見つけた。この手首のおかげで書きづらいけど、今日から日記を書く。 2日目 涙が出てくるわけではないけど、不思議な感情が身体を駆け巡る。外に出たい。誰かと、話したい。 3日目 今頃クラスメイトは始業式だろうか。曜日感覚や日付が、もう薄れてきた。 4日目 あの人が暇を持て余した犯罪者なら、私は玩具か、食事か、それとも、暇を持て余したただの女子高生か。 5日目 この非日常の最初の日を思い出す。私は、わかっていてあの張り付いた笑顔を追いかけた。 6日目 家族のことを考える。私を探してくれているのだろうか。そんな家族だから、私の手首は今不自由なのだ。そんな家族だから、私は今こんな日記を書いている。 7日目 食事に何が入っているか、私は理解している。食べると眠くなって、あの人の夢を見る。心地よくはないけれど。 8日目 音楽を聴くことを許された。少しずつだけど、あの人は私を信頼してきているのだと思う。 9日目 そばに置かれたボタンを押す。小さなスピーカーから流れるのは、私が生まれる前に死んだいつかの歌手の声。少しだけ退屈が紛れた。 10日目     
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