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初恋は実らないなんて昔から言うけれど、私の初恋は見事実って大きな花を咲かせてくれた。
人生で一番恋愛に対して積極的になれるであろう高校時代、私は大好きだった少し年上の幼馴染みと両思いになる事が出来たのだ。
まぁすぐに、あんなもの実らなければ良かったと、後悔させられる事になるんだけれど。
「ごめん、塔子。俺と別れてくれ」
つい先日まで私に愛を説いていたその口で、彼は残酷に別れを告げる。
申し訳なさそうに頭を深く下げるその姿は、私が大好きだった男とはまるで別人のように情けない。
地球上全ての時間が止まったような錯覚に陥った。実際止まったのは、私一人だけなんだけど。
「……他の子に、子供が出来たみたいでさ。学校辞めて彼女と結婚する事にした」
そこまでハッキリと告げられて、ようやく鈍い私も理解する。
成程、私はこの男に騙されていたんだ。上手い事利用されて、良いように使われていたのだと。
その後は何も言う事なく、私に背を向け去っていく初恋の人。
遠くなっていく背中を見つめる事しか出来ない惨めな私。
悔しさや怒り、悲しみなんかよりもただ虚しさだけがポカンと胸に残っていて。
……ああ、これが恋なのか。こんなものが恋だというのなら、私は一生独りでいいやって。
そう思ってしまった。
『時代遅れのラブソング』
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