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「……待ってても、いいの……?迷惑じゃない……?」
私に気を遣ってくれてるんじゃないか。
本当はお友達と、お喋りでもしながらのんびり帰りたいんじゃないか。
様々な不安がドドドと脳内を駆け巡ってしまって、少し早口になりながら恐る恐る尋ねる。
いちいち悪い方にばかり考えてしまう自分が情けなくて仕方ないが、でもこれくらい臆病にならないと、私はまた同じ失敗を繰り返してしまう気がするんだ。
『……塔子さん。それ、本気で言ってます?』
「え?それって……?」
『迷惑か、って』
「あ、や、それはっ……雛乃ちゃん、疲れてるだろうし……さっさと帰ってさっさと休みたいかなぁ、と思って……」
段々と弱気になり、語尾が自分でも聞き取りにくい程薄れていく。
雛乃ちゃんはそんな私の言葉を最後までちゃんと聞いてくれて、その上で盛大なため息をこぼしていた。とてもとても、長いため息だった。
『好きな人が会いたいって言ってくれて、その上迎えにまで来てくれるんですよ。それの一体どこが迷惑なんですか?』
「…………」
『逆に塔子さんならどうなんです?私がそんな事言ったら、迷惑だって思いますか。面倒な子だって呆れますか』
「そんな事、思うわけないっ!」
夜もいい時間だと言うのに、随分と大きな声が反射的に飛び出してしまった。
言ってから、しまった!と我が家の薄い壁をチラリと見やるが……良かった。壁ドンはない。
私は内心でホッと息をつき、今度はもう少しだけ声量を抑えて、雛乃ちゃんにハッキリと告げる。
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