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「……ん?今、私と一緒に映画見に行きませんかって言ったの?」
「は、はいっ……!」
……なんと。
もしかして私は、アルバイトの子にまで気を遣わせてしまったのではなかろうか。
そうでもなきゃ、誰がこんな枯れたアラサー女を貴重な休日に誘うというのだ。
優しい彼女は、誰かが私を誘わないと休んでくれないのでは、と思ったのかもしれない。
「ええと、うん。……有難う片桐さん。でもそういうのは、やっぱり友達同士で行った方が楽しいんじゃないかな」
彼女の気持ちは素直に嬉しい。すごく。
きっと私に、休む口実を与えようとしたのだろう。
だけど、若い子がせっかくの休みに、こんなおばさんと映画を見に行った所で多分面白くないだろう。
だったら休日くらい、クラスメイトや恋人と楽しい時間を過ごす方がよっぽど有意義に決まってる。
そう思ったから彼女の気持ちだけ有難く受け取っておこうとしたのだが、片桐さんはぶんぶんと顔を大きく振る。
「私、店長と行きたいんですっ!だ、ダメですかっ!?」
「え?や、ダメじゃないけど、多分楽しくな……」
「大丈夫です!というより、お、お願いします!!」
「ちょ、ちょっと片桐さん!?」
……何で私なんかに、頭まで下げてお願いするのかなー…。
むしろ片桐さんのような美少女なら、もっと素敵な男性が逆に頭を下げてデートに誘ってくると思うんだけど……。
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