店長の災難

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一体これは、どういう状況なんだろうか。 「店長、苦手な野菜とかありますか?」 「……う、ううん……。無い、けど」 「良かった。安かったのでつい、お野菜買いすぎちゃって」 「…………」 これは夢、なんだろうか。 さっきまで爆睡していたから、脳だけがまだ眠っているんだろうか。 そうでなければ何故、片桐さんが自前のエプロンを付けて、私の家に居るんだろう。 状況が全く分からず、ただ呆然とベッドの上で固まっている私。 その間にも片桐さんは、スーパーで買ってきたであろう食材を手早く冷蔵庫に移していた。鼻歌混じりに。 赤チェック柄のエプロン付けてる片桐さんも可愛いなぁ、とかボーッと考えつつ、頬を抓る。……普通に痛い。 しかしそれ以上の激痛が、ベッドから起き上がろうとした瞬間左足に電撃の如く走った。 抓った頬の百倍近くの痛みに、思わず叫びに近い声が出る。 「いったああああああああああ!!」 「あっ!店長、寝てないと駄目じゃないですかっ!」 力が入らず再びベッドの上で、痛みに悶絶する私。ジワリと変な汗が出る。 何だこれ……!左足首の内側で、神経がギリギリ絞められてるような激痛。 何て表現したらいいのかも、痛みのあまり浮かばない。 痛みに耐えながらベッドにうずくまっていると、駆け寄ってきた片桐さんが私を落ち着かせるよう、優しい声色で言う。 「暴れないで、大人しく休んでいて下さい。私が全部やりますから……ね?」 ズキズキと痛む左足に顔をしかめていると、ひんやりした片桐さんの冷たい手がそっと私の頬に触れた。 幼子をあやすかのようなゆったりとした笑みに、痛みで大騒ぎしていた心臓も少しずつ落ち着きを取り戻していく。 左足の痛みと、頬に触れた片桐さんの心地よい手の感触。 ……これでようやく、今この瞬間が夢ではなく現実なのだとハッキリした。 あれ、でもどうしてこんな事になってるんだっけ……。 私はジワリと熱を帯びている左足に、恐る恐る目を向ける。 ……確かあれは、今から半日程前の出来事だった。
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