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「今日は特別な日だ」
「えっ?何?」
「だから、今日は特別な日だねって」
「いきなり話しかけてそんなこと言われても」
「じゃあ君はそう思わないの?」
「思わないさ。今日は昨日と変わらない平凡な一日だよ」
「もう、分かってないなぁ。だから特別なんじゃない。あ、ほら車来てるよ」
「おっと。平凡な一日は平凡だから平凡なんだろ。特別な訳ないよ」
「そっかー。そういう考えもあるんだね。また新しい発見。うん、やっぱ特別だね」
「もうわかんないな、全然。ところで君は、誰なの?」
「私?ゆかだよ」
「名前だけ言われてもわかんないよ。何年生?」
「三年」
「じゃあ違う学校か。そのプランターもウチのとは別の形だ」
「うん。これ重いのさ。でも、今日も咲いてくれたんだ。特別だよね」
「アサガオなんて一度咲いたら毎日咲くじゃない。もう飽きちゃったよ」
「花の姿は毎日変わるよ。綺麗さも毎日違う。それって凄いことだと思わない?」
「女の子ってファンシーだよね。やっぱ分んないや、僕には。あ、僕こっちだから」
「そっか。私と君は、多分長い付き合いになるよ」
「ますます分んないなぁ。じゃあね」
「うん。また明日」
「はーい」
「私。入るよ? 」
「どうぞー」
「じゃーん」
「おっ」
「どうかな?」
「うん。凄く綺麗だ。特別美しい」
「でしょ?」
「うんうん。それより、こっち来てごらん」
「もう。晴れ姿の花嫁より気になるものがあるの?」
「そう言わずにさ。ほら、見事に咲いてる」
「ほんとだ。凄く綺麗」
「下見に来た時と同じ色だけどさ、紫がずっと濃くなってる。花のフリルも瑞々しく育ったね。土も前より肥えてるみたいだ」
「ふーん」
「何ですその顔は」
「思い出すよね。最初に会った日をさ」
「言われると思った」
「あの時はさ、アサガオなんて毎日同じだって言ってたのにね」
「それも言われると思った」
「変わったよね、ゆっくり時間をかけて」
「うん。おかげさまで」
「私の予想、当たってたでしょ?」
「そうだね。でも君は変わらないね。毎日綺麗になってるけど、心根はずっと変わらない」
「アナタもそうよ。変わりながら、変わらずにいるところもある」
「僕もそんな気がする。君とは、これからも長い付き合いになると思うよ」
「ええ。今日は特別な日ね」
「そうだね。昨日と変わらない特別な一日だね」
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