Ⅲ 1人の紳士

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「えっ?まあ…せめてこの籠のキャンドルが売れれば何とか年が越せるのですが…まだこんなに有るのでもう無理です」 似てるからって動揺して…初めて会う人に何を愚痴っているのだろう…アスランは自嘲的に笑みを浮かべた。 紳士はスーツのポケットから財布をだし、アスランの前にポンと置いた。 「これで籠の中に入っているキャンドルを全部買い取りたい」 「えっ…何仰ってるんですか…?」 咄嗟の時でアスランも意味が解らない。全部を買い取る?財布から銀貨が数枚見えていた。銀貨は銅貨50枚分に相当する。 「だから、そのお金で今持ってるキャンドルを全部俺が買うと言ってるんだ。足りないのか?」 「いいえ!多すぎます。こんなに頂けません!」 キッと睨んで早口で話す紳士。機嫌が悪くなると早口になるところも、ぶっきらぼうな話し方も…何だか小馬鹿にされた様な気分になり、アスランもムキになって反論した。 「貧しいキャンドル売りの僕を馬鹿にしてるなら帰って下さい!恵んで貰わなきゃ生きていけない様な生活はしていません!」 怒りでつい感情をぶつけてしまった。ハッと気付き、アスランはワタワタし始めた。 「あっ!すみません。つい…」 「お…俺も悪かった。キャンドルは部屋で良く使うんだ。いつもは秘書に買いに行かせるのだが、しばらく休みを取っててな…」     
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