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秘書が買うから相場がよく分からないんだ!と目を逸らして話した。さっきまでのキッと睨んできた時とのギャップがあり過ぎてアスランはクスっと笑ってしまった。
「分かりました。ただ…銀貨はこんなに頂けません」
すると紳士は財布を拾い、銀貨を3枚手渡した。
「では、せめてこれだけは受け取ってくれ。1枚はキャンドル代、もう1枚は先程の詫びだ。そして、もう1枚はまたキャンドルを売って欲しいというお願いだ」
銀貨3枚でも多すぎるのだが、きっとこの紳士は譲らないだろう。アスランは半ば諦めの気持ちで銀貨を受けとった。
「分かりました。じゃあ、これお渡しします」
アスランは籠ごとキャンドルを渡した。紳士はキャンドルのみ受け取ると籠はアスランに返した。
「また、ここに入れて持って来てくれ。次はいつ来られる?」
「すみません…いつというのは決めて無くて…」
「1週間後とかはどうだ?」
アスランは少し考えて頷いた。
「分かりました。1週間後に売りに来ます。その…有難うございました」
「ああ。頼んだぞ」
紳士はキャンドルを抱えたまま背中を向けて歩きだした。
キャンドルは売り切れた上に、また1週間後に売りに来てくれと言われた。キャンドル売りをやめられなくなってしまった…
「何だか…助けられてしまった……?」
アスランは呆然としながらその背中が見えなくなるまで紳士の方を見つめ続けた。
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