Ⅲ 1人の紳士

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(エルが大きくなったらあんな感じなんだろうな…って!さっきまで昔の事思い出していたからそう見えてるだけだ…エルがこんな街に居る筈がない!エルと重ねるのはやめよう!) ふと、足下に目を向けるとキャンドルはもう短くなっていた。 何だか消す気になれず、アスランはさっきまでの紳士とのやり取りを思い出しながら、キャンドルが燃え尽きるまで灯る炎を眺めていた。 それ以来、アスランは1週間毎に紳士にキャンドルを売る事になった。 何度断っても銀貨3枚以下は絶対に譲れないというので、アスランはこの紳士からキャンドル代を銀貨3枚受け取っている。 甘える訳ではないが…とても助かっている。母は病気がちなので働く事が出来ない。雑貨店の収入は高いとは云えず、最低限の食事と母の薬代で殆ど使ってしまう。少しでも稼ごうと思って夜もキャンドルを売ったりしているが、思うようにはいかない。銀貨はキャンドルが売れなかった時にだけ使うようにして、残りは大切にとっていた。 紳士は仕事の都合でこのルズベリッジに来ているらしく、後1ヶ月程この街に滞在するそうだ。その期間は街の中心部にある部屋を借りて住んでいる。部屋には電気があってライトもあるはずだが、食事や寝る前はキャンドルの灯りの方が落ち着くから使ってると話してくれた。 アスランは敢えて紳士の名前は聞かなかった…     
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