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「まぁ、あんまり無理はしないようにな…路地裏には行かんほうが良いぞ」
「はい。有難うございます。お爺さんも気をつけてね。良い年越しになるといいね」
老人にお礼を言うと、片手を挙げてアスランの前から去っていった。
ルズベリッジにガス灯が普及しだしたとはいえ、家の中で自由に電気が使える家はまだ街の中心部か町外れの大きな貴族達の屋敷や中流家庭などの一部に限られる。
一歩中心部から離れて路地裏に行くと、まだキャンドルの灯りで夜を過ごす家庭も多い。
本来ならこういう路地裏でキャンドルを売った方が売れるのだが…街の明るさに反比例する様に治安も悪くなる。
今までもうっかり路地裏に入ってしまい、せっかくの売り上げを盗られたり、商品のキャンドルを盗られたりしそうになった。その上、
「何だよ!男かよ!キャンドル点けてる間股開いてくれるかと思ったのによぉ!男じゃ勃たねーな!」
と男娼と間違えられる事もあった。
その為なるべく路地裏には行かず、路地裏と街中の境い目の路地でアスランはキャンドルを売るようにしている。
しかし、それでは自分の身は安全かもしれないが、キャンドルはなかなか売れなくなってしまう。
今日もまだあの老人と数人が買ってくれただけで、殆どの人は冷めた目でアスランを見ながら去って行く。
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