Ⅲ 1人の紳士

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「いつも有難うございます。今日はいつもより早かったですね」 「仕事が予定より早く終わってな。お前の顔が見たくて来たんだ」 アスランは鼓動が早まり一気に顔の温度が上がって耳まで真っ赤になった。 「何っ!男相手に変なこと仰るんですか!からかうのはやめてください!」 「お前は感情がわかりやすくて、コロコロ変わって面白い」 「やっぱりからかっているじゃないですか!」 フンっ!とアスランはそっぽを向いた。そんな様子も紳士にとっては面白くてしょうがない。 「いや…すまない。でも、お前とこうやって他愛もない話をするのは楽しい。これは本当だ」 そう言って笑顔で話す。そんな優しい笑顔を見せられるとまた鼓動が早くなるのを感じた。 (落ち着け!何ドキドキしてるんだ僕…) 「僕じゃなくて、そういうセリフは素敵なレディに言ってくださいよ。はい!今日の分です」 アスランは話をはぐらかしてキャンドルを包む。紳士が買うときは紙袋を用意して包むようにしている。 「……そうだな…いつも助かる。また来週も頼む」 一瞬、間が開いたが、紳士はキャンドルを受け取ると銀貨を渡し帰って行った。 アスランも紳士とのやり取りはとても楽しい。また来週も会えると思うとまた1週間頑張ろうと思えるのだ。     
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