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「少しですが、今ある銀貨全部です。この分で貰える薬をください」
医師は銀貨を受け取るとバッグから薬を出し、小さな紙袋に分けてアスランに渡した。
「少しだけ多目に入れておくから、無くなったらまた来なさい。後、大変かも知れんがもう少し栄養のあるものを食べさせてあげなさい。そうすればかなり良くなる筈だ…」
「すみません…有難うございます…」
アスランは医師を外まで見送り、母のベッドの横に座り、母の手を取り、ぎゅっと握った。
「母さん…母さんまで居なくなったらもう…」
これ以上誰も失いたくない…
父は…もういない。母が亡くなれば自分は天涯孤独になってしまう…
「かあさま…どこにも行かないで…」
アスランは母の手をずっと握り続けた。手を離してしまうと母が居なくなりそうで、怖くて手が離せなかった。
今日だけは母についていてあげよう。
「ごめんなさい…ごめんなさい…今日だけは…」
アスランはその日、キャンドルを売りに行かなかった…
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