I 冬の路地

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(はぁ…もう無理なのかなぁ…やっぱりするしかないのかなぁ…) アスランはまだ籠いっぱいに残っているキャンドルを見ながら深い溜息をついた。 籠のキャンドルを売り切れば街のパン屋で一番安いパンが10個は買えるだろう。 パンが10個あれば自分と一緒に住む母の分合わせて4~5日ぐらいは何とかなるだろう。ギリギリだが年は越せない事はない。 しかし、まだ予定の半分も売れてない。 このままでは新しい年が来る前に食べる物が無くなってしまう。年始は商店も休みなので今の内に買える物は買っておきたい。そう、思ってはいるが…キャンドルは一向に売れる気配がない。 「これを売り切れないと…」 とつい独り言が白い息と共に吐き出された。 アスランが躊躇っている事… それは男娼となって身体を売る事だ。今よりは確実に稼ぐ事が出来るだろうが、こんな事までしなくては自分は生きていけないのかと思うと、情けなくなってしまう。 まだ、何とか出来るだろうと昼は雑貨店で働き、夜は売り物にならなかったキャンドルを分けて貰い、安く路地で売って何とか生活していた。 しかし、それも限界の様だった。病気がちな母親と自分が暮らしていくには今の仕事だけではもう無理だと感じはじめていた。 (今日、売り切れなかったら…もし、売り切れなかったら諦めて身体を売る事にしよう…) アスランは最後の抵抗と言わんがばかりに雪が降る中キャンドルを売り切ろうと必死に声を掛けた。
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