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心にまた針が刺さる。『会いたい』と思ってくれていた事に嬉しくて、嘘をつく事に悲しくて、涙が出そうになる。
アスランは俯いてぐっと涙を堪える。
「心配かけて本当にすみません…」
「いや…もういい。こうやってお前に会えただけで嬉しいんだ…」
甘い言葉に心が痛む。『自分もだ!』と言って甘えられたらどんなに幸せな事だろう。
アスランはワザと別の話題に話を逸らした。
「あの…お仕事は順調ですか?無理されてませんか?」
「ああ。思っていたより順調だな。再来週にアールトンに戻る事になった」
「アールトンに…?」
「アールトンを知ってるのか?此処からはかなり東の方だが…」
「はい。その…友人がアールトンの生まれなんです。僕は行った事はないんですけど…」
「アールトンは緑も豊かで綺麗だぞ。いつかお前にも見せてやりたいな」
『いつか連れて行ってやる』と笑う笑顔が眩しい。その眩しさがアスランの心に針を刺す。
(もう、これ以上は無理だ。これ以上話すと甘えそうになる。決心が揺らがない内にするしかない!)
アスランは覚悟を決めた。
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