Ⅴ 決行の日

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心にまた針が刺さる。『会いたい』と思ってくれていた事に嬉しくて、嘘をつく事に悲しくて、涙が出そうになる。 アスランは俯いてぐっと涙を堪える。 「心配かけて本当にすみません…」 「いや…もういい。こうやってお前に会えただけで嬉しいんだ…」 甘い言葉に心が痛む。『自分もだ!』と言って甘えられたらどんなに幸せな事だろう。 アスランはワザと別の話題に話を逸らした。 「あの…お仕事は順調ですか?無理されてませんか?」 「ああ。思っていたより順調だな。再来週にアールトンに戻る事になった」 「アールトンに…?」 「アールトンを知ってるのか?此処からはかなり東の方だが…」 「はい。その…友人がアールトンの生まれなんです。僕は行った事はないんですけど…」 「アールトンは緑も豊かで綺麗だぞ。いつかお前にも見せてやりたいな」 『いつか連れて行ってやる』と笑う笑顔が眩しい。その眩しさがアスランの心に針を刺す。 (もう、これ以上は無理だ。これ以上話すと甘えそうになる。決心が揺らがない内にするしかない!) アスランは覚悟を決めた。     
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