Ⅴ 決行の日

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アスランは会った時から、この紳士が幼い頃に出会ったエルドラ・ジャスパーだと直感した。なるべく意識しない様にしていたが会って話す度に直感は段々と確信に変わっていった。ただ、エスドラが知っているのはナギの街に住んでいるアスラン・ヴァンフィールドだ。エルドラはナギからも遠く離れたルズベリッジで貧しいキャンドル売りになった自分には気付いていない。 いつか会う約束をした幼馴染が自分に身体を売る様な人間になっていたとは気付かないで欲しかった。軽蔑されたくなかった… だから敢えて紳士の名前も職業も聞かなかったし、自分の事は極力話さない様に気をつけていた。 聞いたら自分の事も話してしまいそうで…『会えて嬉しかった!』『貴方を愛してる』と言いたくなりそうで…ずっと我慢していた… (エルがアールトンに帰ればもう二度と会う事は無い…だから、神様…もう少しだけ…僕のワガママを聞いて下さい…) アスランは目を逸らす事なくじっと紳士を見る。迷いのない目だ。しばらくして紳士が溜息をつくとアスランの腰に手を回し、自分の元に抱き寄せた。 「幾らで売るつもりだ?まさか今日1回限りとは言わないよな?金が要るんだろ?」 「売値は貴方に任せます。貴方がアールトンに戻るまで何度でも構いません」 紳士はニヤリと笑い、アスランの顎を掴み上を向かせる。その顔に今までの優しさは消えていた。 「いいだろう……。交渉成立だ」 紳士はそう言ってアスランの唇に自分の唇を強引に重ねた。
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