Ⅵ 最後の夜

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アスランはエルドラに会った途端に聞いてきた。 「15時発の列車に乗って向かう。昔は船で4日ぐらいかかっていたが今は大陸を横断する列車で2日もかからない」 「僕はよく船に乗ってました…」 「船が好きなのか?」 「小さい頃はよく…船に乗って色んなところへ行くのが夢でした…アールトンにも船で行ってみたかった…」 初めてアスランは自分の事を話した。もう最後だから少しぐらい話しても良いだろう…今日ぐらいは少しでも長く一緒に居たかった。それはエルドラも同じ気持ちだった。 「俺も昔はよく船に乗ったな。父が宝石商で学校が無い時は父に連れられ色んな街に連れて行って貰った」 「どんな街に行かれたのですか?」 「北から南色んなところに行った。文化も文字も言葉も少しずつ違って面白かった。一番覚えているのはナギという町だ。ナギにはもう一度行ってみたいな」 エルドラはふと笑顔になった。優しい笑顔にアスランの胸が痛む。自分と出会った街が一番覚えていてくれたのが嬉しかった。 でも、エルドラを笑顔にさせる胸の中にいるアスランは目の前にいる自分じゃない…それがとても悲しかった。 (今は、目の前の僕を見て!他の誰も見ないで…!) アスランはエルドラの首元に腕を回して自分から唇を重ねる。     
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