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「エルドラ・ジャスパー様です。15時発のアールトン行きに乗られると聞いて…どうかお願いします!」
「本人に直接渡せないの?」
「僕はお使いで来て電車には乗れません…どのお方かもわからないし…早く渡してまた戻らなきゃいけないので……」
乗る車両も渡す相手もちゃんと分かっている。それにアスランの真っ直ぐな目に車掌は嘘をついていないと判断したようだ。
『嘘ついてごめんなさい』アスランは心の中で車掌に謝った。
「分かりました。1級車両のエルドラ・ジャスパー様ですね。業務の合間に渡すから、すぐには渡せないけど構わないですか?後、中身教えて貰っていいですか?怪しい物は渡せないので」
「はい。中はエルドラ様が頼まれていたキャンドルが入っています。すぐに渡さなくてもお渡しさえして頂ければ大丈夫です。急にこんな事お願いしてすみません」
車掌は紙袋を受け取り、袋を少し開ける。中はアスランが言った通りキャンドルが入っていた。
「良いですよ、偶に『忘れ物渡して欲しい』とかありますからね…確かにキャンドルのようですね。では預かります」
「有難うございます」
アスランは車掌に礼を言って駅を出た。目の前の景色が滲んで見えづらかった…
汽笛が聞こえ、駅から離れて行く列車を見えなくなるまで見送りアスランは仕事に戻った。
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