Ⅶ 手紙

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「失礼。そう言えばもう少なくからとキャンドルを頼んでいたのを忘れて帰ってしまうところだった。助かったよ」 「そうでしたか…では確かにお渡し致しました」 車掌はそのまま自分の仕事へと戻っていった。エルドラはソファに座り紙袋を開ける。 中にはぎっしりとキャンドルが入っていた。『あいつらしい』と袋を見て笑みがこぼれる。 よく見ると底の辺りに4つ折りにされた紙が入っているのに気がついた。 開くと手紙のようだった。そっと開いて手紙を読む。 【エルドラ・ジャスパー様 どうしても伝えたい事があり、こんな形で手紙を渡してすみません。 伝えたかったのはお金が必要だった理由です。 僕がキャンドルを売りに行かなかったあの日、母が倒れました。 慌てて医師に来てもらい、薬を頂き、大事には至りませんでした…貴方がキャンドルを買ってくれたお陰で助かりました。 それでも病気を治すには薬が必要な状態でした。薬は高価でどうしてもお金が必要でした。 母の事を言えば、貴方はきっとお金を僕に渡そうとするでしょう…ただ恵んで貰わなければならない生活はしたくなかった… だから、貴方に『理由も聞かず僕を買って欲しい』なんて無茶なお願いをしました… そんな無茶なお願いを貴方は聞いてくれた。     
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