Ⅱ 思い出

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アスランは生まれてからずっと貧しい訳ではなかった。 どちらかといえば、町では裕福な家庭で、大きくはないが貴族の様な屋敷にすんでいた。 ナギという小さな漁師町でアスランは産まれた。 昔は漁師として生活をしていたらしいが、祖父の代から漁をやめ、地元で獲れた魚や他の町から預かった商品などを別の街や国に運ぶ仕事を始め、それなりに富を築いていた。 船で働く船員達は身体が大きくて少し怖い感じだったが、『坊っちゃん!今日も元気だね!』と笑ってくれる笑顔がまるで太陽の様で眩しくて大好きだった。 時々『お土産』と言って持ってきてくれる他の国の絵本や珍しいお菓子を貰うのも楽しかった。 父の職場は海の近くだったが、屋敷はナギの町の小高い丘の上に建てられていた。 広い庭には庭園もあり、母が好きな色とりどりの花が咲いていてまるで花の絨毯のようだった。 丘の上の窓からは青く澄んだ海が一望でき、アスランもいつかは船に乗るんだとワクワクしながら日々を過ごしていた。
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