Ⅱ 思い出

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アスランが4歳のある日の事。 屋敷の前に黒い車が停まり、父が降りてくるのが見えた。 今日は他の国の言葉が書かれている絵本を父に読んでもらう約束をしていた。 やっと母国語の読み書きができるぐらいの頃だったが、『小さい頃から色んな事を知った方がいい』という父の教育方針で他の国の言葉だけではなく、色んな事を家庭教師を雇ってアスランに教えていた。 家庭教師から教えて貰うのも楽しかったが、やはり父から色んな事を教えて貰うのが一番楽しかった。父も船に乗るので、見聞きすることを面白おかしく話してくれる。それが楽しみでたまらない! アスランは慌てて自室に戻り読んで欲しい絵本を本棚から取ると、抱えながら父の部屋に走っていった。 「とおさま!お本よんで!」 「こら…アスラン。部屋に入る時はノックしなさいって言われなかった?」 「ごめんなさい…」 楽しみの余りノックもせず父の部屋にバンッと大きな音を立てて入った瞬間に父に怒られ、アスランは本を抱えたまま仔犬の様にシュン…としてしまった。 「あはははっ!これは元気なお子様ですなぁ。御子息でございますかな?」 父とは違う大きな笑い声が聞こえ、アスランは顔を上げた。     
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