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I 冬の路地
◇◇◇
雪の降る冬の日の夜。ここは西の街ルズベリッジ。
クリスマスも終わり、新しい年の準備に向けて人々は忙しく動いている。
そんな中、路地でキャンドルを売る少年がいた。
「あの…キャンドル要りませんか?」
自分の前を通る人に向かって一人一人に声をかけている。
年は十代後半だろう。目と髪は綺麗な栗色をしているが、疲れが見えて本来の艶を無くしてしまっている。
雪除けの為に黒いフードを被っているからかはっきりとした表情は隠れてしまい見えないが、明るい表情ではないのは確かだ。
一人の老人が少年に声をかけた。
「やあ、アスラン。今日も寒いのに大変だね…
あぁ、今日は3本貰ってもいいかい?」
アスランと呼ばれた少年は籠から3本キャンドルを出して老人に手渡す。老人はアスランに銅貨を数枚手渡した。
「はい…もうすぐしたら年末年始で休みになるから…年を越せる様にしておかないと…って思って…」
ちらっと籠の中を見たが、まだ籠いっぱいにキャンドルは残っている。
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