プロローグ

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若干例えが大げさだったかもしれないが、事の大小を問わずして、人間関係っていうのはそんな感じだ。心理学とか対人術とかメンタリズムとか、それらしい理由はつけることは出来ても、人の行動は究極的には推し量る事なんて出来やしない。 嫌な思いをしたくないなら、他人を信頼する事を放棄した方がやりやすい。 僕のこの考えは、誰かに話したことは一度も無いが、SNSなんかで発信すれば、それは人と接することを逃げている、なんて日常アニメみたいな世界を本気で信じている大人子供からお叱りを受けるだろう。 だらだらと僕の思想(思想なんて高尚な言葉を使えるほどの考え方では無いけれど)を書き記したけれど、僕は人を人だと思っていない。他人を信頼していない。きっとこれからもずっとそうなのだろう。 さて、この文章は僕が僕の思想を赤裸々にするエッセイではない。僕の職場で1年間を通じて起こった5つの事件の報告書である。 報告書なら報告書らしく、事実と過程と結果に終始すべきなのだろうけれど、何かと世話になった上司が小説形式で纏めるように命令してきたのだ。僕だって社会人だ。文章を書いた経験はある。しかし、それはカルテとか引継書とか、その程度のもので、これほど長文を書いたことはないし、物語なんて書いたことは無い。 小説を読んだことはあるが、アガサクリスティや江戸川乱歩とか太宰治みたいな、有名な作家の本しか読んだことが無い。 だから僕は、小説の作法に関しては無頓着である。もしもルールに違反した記述があっても、そこは許してほしい。自分の思想を押しつけるわけでは無いがこの本を読んでいるあなたにだって、僕を同じ人間だと思わない権利はあるのである。
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