これはいつもの事ですか?

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 ポーンと伊月のスマホが鳴った。大した内容ではなく、みかがテレビの感想を送ってきただけだったので、無視したら。 「あ」 「あ?」 「いやその。門限とか、大丈夫?」 「……」  なんかなぁ、とちょっと遠い目になった。 「どうせ家には誰もいないから。帰ったら、家政婦さんの夕食食べるくらいだし」 「そんな……きっとご両親は心配するよ」 「どーだろね。母親はずいぶん前に死んじゃったし、父親は夕方から海外に出張だし」  珍しい話でもないのに、悪いことを聞いた、と書かれた顔。が、別に深刻なことは何もない。 「放置されてるわけじゃないから。会社の、役員? で、めっちゃ忙しいだけだから。月一で、絶対帰って来るし」 「つ、月一……」  世の中、父親が嫌いな女子高生がいると聞くが伊月は当てはまらない。心月は絶句しているけれど、ばかばかしくなるほど必死に、父親は自分との時間を捻出しているのだ。 「いつもの事、いつもの事」 「君の日常は、僕の常識を超えているよ……」 「全然平気だから。でも、まあ」  寂しくない、訳じゃないから。 「一人じゃないならそっちのがいいんだ」  だから続きをどーぞ、と笑えば、ちょっと間抜けな顔をしてから……うん、と心月が頷いた。
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