16人が本棚に入れています
本棚に追加
ポーンと伊月のスマホが鳴った。大した内容ではなく、みかがテレビの感想を送ってきただけだったので、無視したら。
「あ」
「あ?」
「いやその。門限とか、大丈夫?」
「……」
なんかなぁ、とちょっと遠い目になった。
「どうせ家には誰もいないから。帰ったら、家政婦さんの夕食食べるくらいだし」
「そんな……きっとご両親は心配するよ」
「どーだろね。母親はずいぶん前に死んじゃったし、父親は夕方から海外に出張だし」
珍しい話でもないのに、悪いことを聞いた、と書かれた顔。が、別に深刻なことは何もない。
「放置されてるわけじゃないから。会社の、役員? で、めっちゃ忙しいだけだから。月一で、絶対帰って来るし」
「つ、月一……」
世の中、父親が嫌いな女子高生がいると聞くが伊月は当てはまらない。心月は絶句しているけれど、ばかばかしくなるほど必死に、父親は自分との時間を捻出しているのだ。
「いつもの事、いつもの事」
「君の日常は、僕の常識を超えているよ……」
「全然平気だから。でも、まあ」
寂しくない、訳じゃないから。
「一人じゃないならそっちのがいいんだ」
だから続きをどーぞ、と笑えば、ちょっと間抜けな顔をしてから……うん、と心月が頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!