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帰宅時に、サラリーマンに拉致られたからだ。
あれ? と間抜けな顔しているうちに、近くのファミレスに座っていた。意味が分からない。
補習時の眠気が残っているせいで、もう一回あくびをしてしまう。
ふぁああ……。
「……帰っていい?」
「いやその――」
なんか必死なのだが、ひどいことはされそうにないし、全然怖くない。ついでに言うと、出会い頭は進路をふさいで直角のお辞儀を繰り出され、「頼むから話を聞いてくれ!」と懇願された。
いいとか悪いとかはない。度肝抜かれているうちに連行された。
なので、これは拉致である。
訴えたら勝てる。が、今のところやるつもりはない。面倒臭い。
ドリンクバーとチョコパフェを頼んで、ちびちび減らしながら相手の出方を待っているのだが、向こうの注文したコーヒーは口をつける前に冷めているし、話は始まりそうで始まらない。話し出そうとして、結局口を閉ざす、が今のところのルーティンだ。
キリがない。
しょうがないなあ、と諦めた。待っているより、主導権を握った方が早く済みそうだ。あと、無駄に時間が過ぎていくのに飽きた。パフェは食べ終わったし。
「お兄さんさぁ」
「な、なんだろうか」
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