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重大な、とても重大な告白のように真剣な表情だが、伊月にしてみれば拍子抜けだった。
なーんだ、背もたれに体を戻した。ついでに残り少ないオレンジジュースをストローで吸って一気に片付ける。
ずずこずぉーと変な音。
「で?」
「いや。いいやいやいや」
「へ?」
「疑問に思ってくれ! おかしいだろう?」
「全然」
「はあ?」
だって。
「それやったのあたしだし」
「なっ――」
固まった心月とは逆に、そっかぁ、と伊月は納得していた。今朝方、バス停の前で立ち尽くしている人がいた。確かに男の人で、スーツを着ていた。それが心月だったわけだ。
横顔があんまりにも呆然としていたし、ちょっと上手くいきそうだったから「戻して」みた。バスがいるのに、相変わらず立ったままだったその背中に、乗らないの? と声もかけた。
一応全くの他人、でもなかった。顔は全然覚えてなかったけど。
目を白黒させる心月が、かなり面白い。
「き、君は……超能力者なのか?」
「響きはカッコいいけど、やれることはかなりださいんだよね」
「ださい!? 時間を戻せるんだろう?」
「たぶんね」
「たぶん?!」
「だって確かめたわけじゃないし。何となくそーかなーって」
「……」
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