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「あ、だからって未来を変えるとか、タイムトラベルとかしないから。そんなSFの主人公なんてやれないし、やってらんないし」
高校生は、暇じゃないのだ。
ドリンクのお代わりに行きたくなってぱっと立ち上がれば、びくっとされる。気弱そう、なのではなく本当に怖がりらしい。しょうがないので座りなおして先に説明することにした。
「あのね、超能力って言っても、超ショボいから」
「ショボいって……でも、超能力だろう?」
「じゃあ言うけど。使えるのは巻き戻しだけ。大体時間は三十秒まで。発動は自覚ありの時となしの時の両方。細かい制御はできなくて、可か不可の二択な上に、別にあたしの都合は全然関係ない。あと、繰り返しの発動はムリ」
「えーっと……」
分かってないようだ。ちょっとため息をついた。
例えば、おばあさんが転んだとする。それを伊月が見ていた場合。
まず、この微妙な能力が発動するかどうか、という壁にぶち当たる。
運よく発動しても、時間は最長三十秒。おばあさんが転ぶ前なのか、後なのか、これまた微妙なところ。
さらには転ぶ前に行き当たったとして、来る未来に備えて、誰かが――確実なのは伊月自身が――手助けしなければならない。手が届けばいいが、そうでなければおばあさんの辿る先は同じになる。
しかも失敗すればそれまで。二度目はない。
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