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どこをどうとっても、ショボいし微妙だし、超能力なんて胸を張って言える要素が全然なくてダサい。
まあ、全く役に立たないわけでもない。割れ物を割らずに済んだとか、水たまりに突っ込まずに済んだとか、些細な危機回避なら何度か経験した。
「てゆー感じなんで、構えられるとなんかムカつくっていうか……」
「す、すまない……あまり気の強いほうじゃなくて……」
青い顔色に、むっとしていたら頭を下げられてしまって、逆に困惑した。どうにも慣れない反応だ。大人ってのは、もっといつも偉そうなのに。
「でも、よく騒ぎにならないな」
「一度起こった未来を知っているのはあたしだけだし」
むしろ、こんな風に誰かが覚えている方が、イレギュラーで初体験だ。
「なんでだろ? 戻ったのはバスで、古藤さんじゃないからかな?」
「時間を戻す範囲があるってことか……どうしてずれないんだろう」
「たかが三十秒だから、どっかでうまく合わせてんじゃない?」
この際、細かいことは割とどうでもいい。鷹揚な、というかテキトーな伊月の態度に、心月は呆気に取られてから苦笑した。
「大体さ、古藤さんだってバスに乗れたくらいで、どうこうなったわけじゃないでしょ」
「――」
すっと心月が真顔になった。意外な表情に、つられて体が硬くなって――
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