うしぶたとり

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うしぶたとり

「養豚場に養鶏場。」 「毎度ながら、いきなりどうした。」 「しかし、養牛場、と言う言葉は知らない。」 「まぁ、聞いたことはないかもな。」 「わが国の主な食肉は、牛豚鶏。だがしかし、上記のあれはどういうことだね?」 「何が。」 「牛だけ養われていない!!」 「ただの言い方の問題だろ。」 「いーや、言い方だけじゃない。実際、牛の扱いは他よりも悪い。」 「そんなことないだろ。」 「例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、これ全て食する。」 「あぁ。」 「しかしだ。子牛は食べるのにヒヨコは食べない!子供の肉ということに変わりはなかろうに!」 「いや、鶏は卵食べるから。あれが子供みたいなものだろ。」 「卵にはまだ自我がないからセーフ。」 「卵の自我有る無しをお前が決めるな。」 「無精卵に自我があるわけなかろうに。」 「全部が全部無精卵じゃないからな。」 「そうなの?」 「知らなかったのかよ。全部無精卵だったら繁殖出来ないだろ。」 「じゃあ、無精卵じゃない卵は何て言うんだい?」 「有精卵。」 「ほほぉ、無、に対して、有。然り然り。」 「然り、って、そんな使い方するのか。」 「じゃあ、無茶、じゃないことは、有茶。」 「そんな言葉はない。」 「無邪気、じゃない人は、有邪気。」 「悪魔みたいじゃねぇか。」 「無菓子、じゃない状態は、有菓子。」 「なんだ無菓子って。」 「間違えた。」 「だろうな。」 「無菓子、じゃなくて、昔、だった。お菓子が無くては、泣きすぎてトルネードが起こってしまう。」 「絶対泣くなよ。」 「…はて。」 「どうした。」 「昔、には、無、が無いのだが。」 「今更か。」 「無、が、そもそも無いことを意味しているのに、その、無、が、無い、となると、中々に興味深いことになる。」 「どこが。」 「無が無い、ということは、単純に考えれば、有る、ということになるんだよ。」 「単純に逆にするならな。」 「つまり、昔、は、様々なものが有ったわけだ。」 「それは、昔に限らずな。」 「昔に有ったものが、今は無い。無に有があったのに、有が溢れる今には無。皮肉なものなんだよ。」 「意味理解して喋ってるか?」 「ばっちり一割五分。」 「15パーセントじゃねぇか。」
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