顔面寿司

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君がいなくなってから、色んな夜を過ごしたよ。
迷走し、不如意に不如意の重ね塗り。
心は夜の海みたい。
とことん闇で、死もちらつく。
やる事全てに手応えなくって、飲めない酒にも手を出して。
酩酊し、無意識に、ごめんなさい！ごめんなさい！…と泣き叫ぶ夜。
もはや神など信じぬ僕は、コーラを飲んでも良かったろうけど。
君を裏切るような気がして、あれから数年飲んでない。

そして今、やっと今。
僕の近くにいる人くらいは、きっと笑顔に出来ている。
おこがましいけど、微力だよ？
苦学生のよな金銭感覚も、ゼロが一個は増えたかな。
ヘドロみたいな現実に、歪に腐って荒んだ心も、徐々に段々晴れてきて。
あの日のやらかい木洩れ陽みたいな、気持ちになれる日も増えた。
そんな日々。
今はもう、関係性も、違っているけど。
僕は今日、君に、会いたい、無性に、会いたい、お礼を言いたい、一緒に二人でコーラを飲みたい、急な連絡、奇跡、繋がる、今晩会える、一緒に二人でコーラを飲みたい、よく待ち合わせした、変なオブジェへ、車を走らす、BGMは君が好きだった曲、生きててよかったそんな夜を探してる、一緒に二人でコーラを飲みたい。
と、到着寸前、僕は車を止め、真面目な顔して自販機へ向かう。

コーラを買う手が、震えてる。
大丈夫？大丈夫。
自問自答で襟を正す。
大丈夫、やってきた。
あれから僕は、やってきた。
今日は特別な日だ。

ピッ。
ガシャコン。
スプライト。

「おぉぉぉおおおい！！！業者の人ぉぉぉおおおお！！！」

まさかのドリンク入れ違い、全く不要なサプライズ。
余りの事態に驚き果てて、顔面が寿司に変化する。
こちとら生来驚くと、顔面寿司になる男。
おいおい全くそりゃないよ、カフカもびっくり顔面寿司。
おいおい全くそりゃないよ、寿司にスプライト合わねぇよ。