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「言えるわけないだろう。情が深くなったから、少し間があいても大丈夫になったなんて言ったら…………私の気持ちが、あからさまに和真に知れてしまうじゃないか…………」
後半はささやくように、照れを含む声で告げられた内容は、本人は意図していないにしても、凶悪な可愛さだった。すでに文也から聞かされていたとはいえ、本人からほのめかされるのは、やはり違う。
「分からないよ」
深青の首筋に顔を埋め、頬ずりをしながら、柔らかな髪を撫でた。
「俺も深青と同じ気持ちだから。俺の情が深くなったからなんだなって、納得したと思う。深青の気持ちなんて、分からない」
深青の身体が、腕の中で強く張りつめた。
「な、んだ……それは…………」
深青の顔にすり寄せていた和真の頬に、深青の手がかかって、視線が絡むように持ち上げられた。
「てっきり、お前は、義務感や同情から、私のもとに通ってきてくれているものとばかり……!」
「ああ……」
「言えるわけないだろう……必要だからキスするだけの相手に、好意など向けられたって…………困らせるだけだ……」
「…………そうだな……」
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