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 深青の言い分は、和真だからこそ、分かる。口付けをする側と、してもらう側。正反対の立場からでも、大差はない。必要だから仕方なく口付けをしてもらうだけの相手に好意を寄せられたところで、困るか、気持ち悪く思うかしかないだろう。和真はそう思っていた。特に、深青は、色恋ごとに全く関心を示さなかったから、余計に。 「ごめんな……」  慈しむように、頬を撫でると、深青はぐっと唇を引き結ぶ。 「それは、なんの謝罪だ」 「いや、それは……いろいろ。でも、一番は、勝手に勘違いして、深青に苦しい思いをさせたこと、だな」  深青の前髪を払って、その額に触れると、すでに熱はだいぶん落ち着いたらしく、口付けたときほどの熱はもう残っていなかった。 「そんな謝罪は、いい。私も、医者の話を黙っていて、悪かった。和真のことを責められない」 「でも……深青はこうして、つらい思いをしたわけだから。昨日の俺がもう少し冷静だったら、こんなことにはならなかった……」  過ぎたことを悔いても仕方がないとはいえ、昨晩の自分の行いが深青を苦しめる結果に結びついたことを思えば、和真はそう簡単に己を許せる気がしなかった。その身をもって実害を(こうむ)ることになった深青には、どれほど謝罪をしても足りない。  和真がふがいなさを噛みしめていると、深青の温かな手が伸びてきて彼の手を優しく包み込んだ。そして、深青はふわりと笑う。 「なら、おわびに一つ約束してほしい」 「約束?」  深青は重々しく頷く。 「これからも毎晩、私のところへ来ること」 「そんなの――」     
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