探偵気取りの学級担任

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 くるりと後ろを向き、チョークを手に取る。カツカツと小気味の良い音が響いた。 「誰かに呼ばれたか――もしくは、自主的に向かったのか」  黒板に書かれた二行に、皆が息を呑む。  先生は振り返り、後手で前者に拳を当てた。 「ここ最近、いや今朝でもいい、智田と話した奴は居るか? 話をしているところを見た者でも構わない」  クラスメイトは視線を交える。だけれど名乗り出る者は現れない。  僕が記憶している限りでも、智田くんの声なんて授業でないと聞きすらしない。クラス内で浮いてるという点でシンパシーを感じていたけれど、そんな僕からしても彼は人付き合いが苦手だった。  さぞかし学校生活が……つまらなかったに、違いない。 「そうか。分かった、もういい。それじゃあ的を絞って推理しよう」  振り返った先生は、まるで授業でも進めるかのように喋りだした。『自主的』という文字から伸びた白線が、複数に分離される。 「仮に智田が自主的に向かったとしよう。何かしらの用があって屋上に。一つは自殺だ。柵を乗り越え、飛び降りる。あと考えられるのは何だと思う」  はい、と手を挙げる湯川さん。こんな時まで挙手制をなぞらなくたって良いだろうに。優等生としての条件反射だろうか。僕は冷めた目で、それを見届けた。     
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