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「サボタージュ、じゃないですか」
「なるほど、確かに。今日は晴れだし、見晴らしのいい屋上はサボるのに絶好かもしれないな」
「あー、でも先生、屋上って開いてんすか? 俺、行ったことねーから分かんないんすけど」
鼻先のそばかすを掻きながら、杉下くんは間に割って入った。彼らしい感情を隠さない喋り方だ。
「屋上への出入りは原則禁止だ。だが鍵を掛けているわけじゃない。ここだけの話、三年の何人かは屋上で昼食をしている。それと浅見、お前は天文部だから何度か行ったことはあるな」
びくりと肩を震わせて、浅見さんは小さく頷き、消え入るような声を出した。
「……先生の、言う通りです。鍵は、掛けてません。柵も、そんなに高くは」
「十分だ、ありがとう浅見。要するに誰でも出入りはできるということだ。時間があれば、誰でもな。そうだな、鮫島」
普段は見せない、突き刺すような目を先生が向けると――激しい物音が鼓膜を叩いた。数人は身構え、何人かは驚きに目をつむり、ほとんどの生徒は彼の方へと振り返る。
教室の一番後ろ、ドア付近。その居ても居なくても目に付かない席に。
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