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おそるおそる僕は手を挙げた。
「どうした小耕」
「……いえ、あの、普通こういうのって、隠さなくてもいいのかなって」
「どうだろうな。どうせ隠したところで噂になって広まるし、あること無いこと話されるぐらいなら、いっそ説明した方がいいだろ」
金明先生の声色は低く穏やかだった。まるで世間話の延長みたいな台詞を選んで。僕等を混乱させまいと、必死に努めているのかもしれない。
脇道に逸れたとばかりに、先生は視線を戻す。
「まずは、そう。お前達の青春を台無しにしてしまった。そのことを謝らせてくれ。すまなかった」
清涼感のある短髪を深々と下げられた。呆気に取られる一方で、こういうところが女子受けする秘訣なんだろうなと思う。案の定、どこかで「先生の所為じゃないよ」と鈴のような声が飛んだ。
金明先生は顔を上げ、「すまない」と応じる。
「でもな、智田が死んだのは、どうあっても学級担任である俺の責任だ。今日にでも、教頭や校長とも話し合うんだろう」
「それって、辞めちゃうってことですか?」
「分からん。他校に異動かもしれないし、そのまま職を失うかもしれない」
「そんなぁ……」
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