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女子の場違いな嘆きも頷ける。金明先生は男女問わず人気が高い。三十代前半と若く、他の教師からも信頼が厚いのか、生徒指導主任を担っている。頭ごなしに怒鳴らない、一緒になって悩んでくれる、まともそうな先生だ。
不憫な話だけれど、ほとんど交流の無いクラスメイトが亡くなるより、親しい担任が辞めていく方がショックな生徒も居るんだろう。
ともあれ、現実離れした状況に頭が追い付いていかない。ニュースでは散々、学校での自殺とかが報道されていたのに。きっと、どこか無関心だった。いざ母校で起こってみても変わらない。テレビ越しに遠くから眺めているようで。多分これから、全校集会での黙祷やら校門前の取材とかで、嫌になるぐらい実感を味わうんだろう。
「せめて後一年半、お前らの卒業まで見届けたかったが、悪い」
なんとも言えない、空白の間が流れ。
だからこそ――と沈みかけた金明先生は、強く眉を寄せた。
「智田への償いと、俺の教師生命を賭けて、最後まで足掻かせてほしい」
熱を帯びた担任に、生徒の皆は口をつぐんだ。既に亡くなってしまった智田くんに対して、僕達に何ができるんだろうか。冷たい言い方かもしれないけれど、この場で感傷に浸ったところで、足掻いたことになりはしない。
首を傾げた僕は「どういうことですか?」と尋ねてしまった。
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