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「その学校に通わなくちゃいけない生徒だ。皆が皆、転校できるわけじゃないからな。ある奴は警察の取り調べで他人が信じられなくなり、またはマスコミの執拗な取材で病んでいった。問題を長期化させた学校側の所為で……一番傷ついたのは、残された遺族と、お前らだ」
そういうことか。先生は同情心で昔話をしたわけじゃない。智田くんの死を長引かせない為に、僕達に言って聞かせてるんだ。
「自殺なら自殺でいい。そうじゃないなら、他の生徒を巻き込む前に、もう一度だけ考えてくれ。完璧に隠したつもりでも、必ず警察には突き止められる。小さな手がかりなんてのは、誰かが見て、そして知っているものだ。自首せず重い罪で警察に捕まるのか、それとも刑を軽くして生きるのか。俺を信じてくれとは言わない。だが悪いようには絶対にさせない。だから皆、知っていることだけでも、話してくれないか?」
△▼3△▼
「あの……私、一限目の後、智田くんが階段を上がっていくの、見ました」
おずおずと俯きがちに喋ったのは、確か。
「浅見、よく話してくれた。ありがとう」
そう、浅見さんだ。肩まで伸びる黒髪で目元まで隠した女子生徒。普段から物静かなのか、授業中も消極的に参加している。影の薄いクラスメイトは、どうにも覚えられない。
「あっ、それ、俺も!」と口をついたのはムードメーカーの杉下くん。「なんか一人だけ教室戻る方向違っててさ。おっかしいなと思って見てたんだよ」
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