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「一限目…‥授業は、音楽だったな?」
「そうっす。んで、二時限目は英語」
「その時から智田は欠席してたんだな? 他に見た奴は居るか?」
何故か先生と目が合った気がして、僕は「見ていません」と応えた。正確には分かりません、だけども。
金明先生は教卓から手を離し、片方を顎先に据えた。スーツ姿も相まって、どこか刑事のようだ。
「杉下、音楽室は特別棟の何階だ?」
「えーと、三階っすね」
「四階にある教室は?」
「へ、え、ぁえーと……」
「生活教室と視聴覚室だった気がします。四階の上は屋上ですね」僕は詰まった杉下くんの代わりに答えた。
「ありがとう、小耕。誰か、時間割表を見せてくれないか?」
「あ、はい、ちょっと待ってください」
いち早く動いたのは、学級委員である湯川さん。銀縁のメガネが似合う、七三分けの小柄な女子。
彼女は鞄からクリアファイルを取り出して、そのまま先生に渡す。皆の視線からは慣れているけれど、重々しい空気なのが嫌そうだった。
先生は時間割表に目を通して、そっと机の上に置く。
「このクラスでは音楽と家庭科が続く曜日は無い。つまり智田は、時間割を間違えて行動したわけじゃないってことだ。あと考えられるのは、二つ」
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