探偵気取りの学級担任

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探偵気取りの学級担任

△▼1△▼  ざわめく教室を、ひときわ大きい咳払いが制した。 「こんな状況だ……取り乱すのは分かるが、どうか冷静に聞いてくれ」  学級担任の金明(かねあき)先生は、溜息と共に教卓へと両手を付いた。きっちりとしたスーツを正して、誰にともなく話し出す。 「屋上から落ちたのは、智田(ともだ)で間違いない」  そう告げると、またぞろクラスメイトは騒ぎ始めたが、すぐさま金明先生が続けた。 「今、他クラスでも先生達が事情を話している。詳しいことは分からないが、おそらく即死だろう」  女子の押し殺した悲鳴が聞こえた。非日常的な言葉を前に、一瞬にして皆が青ざめ、凍り付いていく。  智田(ともだ)一郎(いちろう)は僕等B組の生徒だった。根暗で受け答えも悪く、いつも伏し目がち。誰かと親しくしている素振りも見せない。いわゆるボッチと呼ばれる男子高校生。そんな彼が、一時限目を終えた後から姿をくらまし、そして三時限目開始のチャイムと同時に――この世を去った。  それを見た人間は少なくない。窓際に居た僕自身も、その内の一人だ。さらに駆けつけた救急車の音で、全校生徒にも知れ渡った。ここは都内の一角だ、下手をすれば近隣の住民にも。     
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