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「はい、従兄弟の家が、番号などない、翔と昴という名前にしました。すると、昴は二歳の時に、大雨の後の水溜まりで溺死していました」
大雨にはしゃいだ昴は、家の前に出来た水溜まりが池だと勘違いして、大興奮の状態だったらしい。そこで、目を離した隙に落ちたとなっていた。
「事故死なのか……」
「下田家は男しか生まれていないのです……嫁はなかなか迷信だと言って信じません」
他にも、父親の弟の家は、一歩(かずほ)、三葉(みつば)とつけたが、三葉は三歳の時に、風邪で死んでしまった。
「三葉ではダメなのですか?」
「続きの数字とは認められずに、死を騙せなかったのだと言われています」
ただ数字が付いていればいいという問題でもないらしい。
「下田さんの息子さんは、何というお名前ですか?」
「正一(しょういち)です」
では、子供を守る為には、正三と名付けるしかない。それを、妻がかなり嫌がっていた。
時計を見ると、二時になるところであった。俺も半分眠っていると、裏手から物音がして、黒川が帰ってきていた。黒川は、土間に入り、リビングを見ると、微妙な表情をいていた。
「上月、それは朱火定かな?お客さんか?」
「……はい」
そこで、俺も志摩に寄りかかって、眠りそうになっていた。今日は本社に行き、更に講習や飲み会で疲れてしまっていたのだ。
「ええと、客人の名前は?」
「……下田 太郎さんです」
そこで、見かねた黒川が、キッチンから酒を持ってくると、下田に勧めていた。
「酒は飲めますか?」
「いや、私は明日も仕事なのですよ。あ、もう今日ですか」
それでは、徹夜は不味いだろう。志摩は毛布を持ってくると、下田に勧めていた。
「ここで、仮眠していってください」
徹夜より、少しでも眠った方がいい。
「はい。そうします」
完全に眠ってしまった八重樫を、小田桐が背負って運んでいた。氷渡は、自力で立ち上がったが、同じく下田に支えられて、自宅に向かう。
俺が光二にチェンジすると、光二は氷渡を追いかけて家を出て行こうとしていた。
「すいません、黒川さん。客人をお願いします」
客人を残して出かけるというのも失礼ではあったが、光二にとっては、少ない自由な夜なのであろう。
「分かった」
黒川も渋々引き受けていた。
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