第一章 遺伝死

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 俺は二重人体で、光二にチェンジすると、光二の内部に移動する。存在としては、思念体に近いとは思うのだが、触れようと思えば内臓にも触れられる。しかし、普段は半素通りしていた。  俺の定位置の居場所は、光二の心臓で、この空間が、一番居心地がいい。それは、光二の中にいる蛇も同じようで、既に先に眠っていた。  俺が蛇の横に寝転ぶと、蛇は尾を使って俺を上に乗せていた。蛇は、俺を掛け布団くらいには考えているらしい。  光二は、俺と二重人体であったせいで、本来持っている闇の蓄積が少なく、又、×としての能力が低い。そこで、壱樹村にある占い師、兎屋が光二に修復の蛇、闇の蓄積をするオウムの二匹を与えてくれた。この二匹のお陰で、光二は元気に生活している。  オウムの姿を探すと、オウムが気付いたのか走ってこちらにやって来た。そして、その勢いのまま、心臓に激突したので、光二が少し苦しんでいた。 「守人、暴れるな……」 『ごめんなさい』  俺は素直に謝り、オウムの頭を叩いておく。オウムは、いつも俺が素っ気ないので、探してくれた事が嬉しかったらしい。しきりに、オウムが頭を俺に擦り付けていた。  俺は光二の中では、親指くらいの大きさしかないので、オウムが巨大に見えている。蛇なども、俺にとっては大蛇であった。  俺も一人になって改めて考えてみると、下田の家の事が、迷信なのか、何かの病気なのかは分からない。  でも、今はとにかく眠い。そこで、蛇の上で爆睡してしまった。  目が覚めると、光二の中のままで、時間を確認すると昼に近かった。光二の中にいるだけならば、特に空腹になるという事もない。でも、つい昼飯は何かと、外を覗いてしまった。  すると、見慣れないキッチンで、光二が懸命に料理をしていた。でも、何を料理しているのか、さっぱり分からない。 『光二、何を作りたいの?』 「出汁の卵焼きと、味噌汁、ほうれん草のおひたしかな」  どうも見ていると、光二は必死なのだが、全く進んでいなかった。 『光二、三十分だけチェンジしよう。俺の方が料理に慣れている』  そこで、光二とチェンジすると、キッチンを見てみた。見慣れないキッチンであるが、造りは古民家で、これは氷渡の家であろう。勝手に冷蔵庫を開けるのも悪いとも思うが、味噌などの在処が分からない。 「ご飯は炊飯器ね……」
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