第一章 遺伝死

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 ご飯は自動にセットされているので、そう失敗は無いであろう。俺は、鍋を出すと、昆布と鰹節で出汁を取り、味噌汁を作る。その間に、厚焼き玉子と、ほうれん草のソテー、焼き魚を焼いておいた。それを更に盛り付け、洗い物を済ませると、家に走って帰り、糠床から漬物を持ってきて、切っておく。他に、志摩の煮物を持ってきてしまった。 「光二、チェンジしていいよ」  再び光二にチェンジすると、光二は料理を茶の間のような場所に運んでいた。そこには、氷渡がいて、新聞を読んでいた。 「あれ、光二、朝食を用意したのか」  二人きりというのでもなく、氷渡家の×がわらわらと出てきた。そして、キッチンから料理を持ってくる。  俺も大人数には慣れているので、大量に作っておいた。 「美味しい。味噌汁に漬物だけでもいい」  俺の家には、夜は人が来るが、朝は志摩と二人の時も多い。氷渡の家が賑やかだとは、知らなかった。 「ん?上月が起きているのか……」  氷渡が卵焼きで唸って、確認していた。 「分かるかな……守人が料理をしてくれた」  氷渡は、顔を引きつらせて、味噌汁が慣れている味だったと言い訳していた。でも、持って食べているのは卵焼きで、言い訳だとすぐに分かる。 「上月は、少し休ませないと、村では光が疲れていると心配されている」 「そうだね……」   光二を責めないで欲しい。俺が勝手に出て、料理をしただけだ。  しかし、光が疲れているというのは、どういう現象であろう。 「村の者は光に敏感になっているからな……少しでも変化があると、大騒ぎだよ」  光に変化をさせた覚えは無いが、今までは月明かりで本が読めたほどであったが、今は電気を必要とするらしい。俺は、リンクを弱めた覚えが無かったが、体力がないと自然に弱まってしまうらしい。 「守人は、守人様ですからね……あまり、無理はさせられませんね」 「そうだね……村の光は重要だからね」  俺も心配をかけないように、少し気をつけてみよう。  氷渡の居間は、茶の間と大広間からなっていた。茶の間には、古い食器棚なども置き、昭和初期の雰囲気を保っていた。そこに卓袱台なども置き、案外、不便を楽しんでいるようだ。大広間は、ただ吹き抜けの間で、外から人が入ってくる。そこには、毎回、テーブルを出し、宴会さながらに飯を食べていた。
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