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僕と彼の1日目。
僕は「シチュー」が大嫌いだった。
僕は「美花」という女みたいな名前が大嫌いだった。
僕は「彼」が大嫌いだった。
夜、ドタドタと母の階段を昇り降りする音が聞こえてきた。僕の父は早くに交通事故で亡くして、今は母と2人きりだ。母は朝から晩まで仕事をしていて、コンビニのアルバイトでも入れたのだろう。でなければ、こんな時間に母が起きるはずがない。部屋のドアを開けて母に呼びかける。
「母さん、また仕事入れたの?」
「あら、美花起こしちゃったかい?ごめんね、あぁそうだ、聞いてよ今度温泉行こうと思うのよ、そのために少しずつお金貯めなきゃね。」
「そんなこと言って…体壊さないでよ。行ってらっしゃい、おやすみ。」
僕はドアを閉めてベッドの上にダイブした。
ジリリリリリリッという頭の中を反響する爆音で目が覚めた。音の発信源を見つけるため半身を起こし、掌でペシりと叩くと音がやんだ。カーテンの隙間から溢れる朝日が眩しくて目を細めた。僕はベッドから降りて大きく伸びをする。
そうして、僕の素晴らしい半年の1日目がはじまった。
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