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日向と葵
細く長い指が伸びてきて日向の頬を掠め、先程の口喧嘩で乱れた髪を後ろに撫でつける。アラバスターのように艶やかな肌と深く水をたたえた大きな双眸を持つ少年は、その愛情のこもった仕草を当然のように受け止めていた。
白銀の毛先を暫くもてあそんでいた葵の指先は、その先を期待してわずかに顔を上げた少年を無視して離れていった。
興奮で潤んだ瞳の上の眉を顰め、少年は憮然とした。その表情をつくづくと眺めながら葵は揶揄うように言った。
「好きにおやりよ」
「そういう問題じゃない、そこに座って待ってて」
青年は指さされた先のカウチソファに素直に腰掛け、大股で部屋を出てゆく背中を見ていた。
「なんだ、普段の無表情より怒っている時の方が楽しそうじゃないか」
そう独り言ちた葵は、日向より長身でしなやかな肢体を、雅な猫の様にお気に入りのクッションに委ねた。
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